マスメディアは絶滅危惧種か? ~その22010年12月11日 16:45

~ その1からの続きです ~

ジャーナリズムにおけるマーケットインとプロダクトアウト


講演の中で、
「いい記事を書けば、新聞は売れるんだ!」
というあまりにジャーナリズムを頑なに考える意識が
依然として業界内には強くあり、
それが経営の変化の障害になっているという話がありました。

いきおい、国内製造業の弱体化を招いている
「いいものを作れば、お客は買うのだ!」
という信仰と同じだなぁと感じたのですが、
これに続けて、
「バラエティ的なニュースであっても、
そういうもののほうがより広く受容されるのであれば、
それは立派なジャーナリズムの一形態である」
という様な話をされたときに、
ああこれはジャーナリズムのマーケットインだと気が付きました。

確かに今の日本で、狭義の硬派なジャーナリズムへの需要は
非常に限られているように思います。
内容は濃いけど、限られた人しか受容しないものと、
内容は少々薄いけど、幅広い層に受容されるもの。
どちらが”良いジャーナリズム”ということは言えないし、
テレビのようなマス媒体のビジネスを考える場合には
後者に軸足を置かざるを得ないのは理解に容易です。

ただ製造業の経験からの類推すると、
今後必要になってくるのはむしろ
”硬派なジャーナリズムのマーケットを育てていく”
ことなのではないかと思います。

製造業では、少し前にはマーケットインの大流行があり、
猫も杓子も「顧客に聞け」とやっておりました。
その後、マーケットインだと本当に新しいものは出てこないねぇ、
ということになり、
今は”提案型商品”などと称して、ついこの間まで大否定だった
プロダクトアウト型へのゆり戻しが起こっています。

何が”良いジャーナリズム”なのかという話は、
多分、振り子的に永遠に結論は出ない議論でしょう。
だとすれば、もうちょっと大衆迎合的でない硬派な番組を作り、
そのファンを育てるための努力をしてみてみるのも
逆張り戦略としては、それなりの整合性があるように思えます。
少なくとも門外漢には。

どうもこのままだと我が国は、
ヤンキーが芸人とジャニーズ見て笑っているだけの国になっていく
ような気がして、杞憂だとは思いますが、少々怖いのです。

マスメディアは絶滅危惧種か? ~その12010年12月11日 16:14

ある民放キーテレビ局の経営トップのお話を聞く機会がありました。
タイトルは、その方が使っていた言葉から。

内容としては、衰退が先行するアメリカや新聞の事例
・データを絡めつつ、非常に厳しい経営環境の解説と、
これに対応する経営戦略の一端といったところ。


感じたことをつれづれと。


広告業とジャーナリズム

今回は主に経営の話が主だったので、
広告業の一角としてのテレビがその地位を失っていく中で
どう企業収益を確保していくかという点に焦点がありましたが、
個人的にはもう少しマクロな視点で、より大きな問題を感じました。

ビジネスである限り、広告であろうがテレビであろうが
業界全体の興亡があるのは世の常ですし、
極論をすれば、広告業という業態がなくなったって、
それがそこに需要がなくなった結果であれば別に問題はないし、
それはしょうがないことだと思うのです。

「どこでもドア」ができたら輸送業なんてまるごといらないでしょう?
まあ「どこでもドア」は当分できないだろうし、
広告業がなくなることも多分ないでしょうが。。


むしろ問題に感じたのは、広告が今まで非常に儲かる業態であり、
だからこそマスメディアは高楊枝のジャーナリズムにも
飯を喰わせてやっていたものが、
今後マスメディアが儲からなくなってきた場合、
ジャーナリズムは口減らしにあってしまいやしないかという点です。

講演の中で触れられていましたが、
ネットを中心とした”引用メディア”の氾濫で
“速報性”がその商業的価値を失い
ジャーナリズムはますます金を生まなくなっているそうです。
一方でマスメディア各社が”企業”である限り、
収益性向上へのプレッシャーは強まることはあっても
弱まることはないでしょう。
ジャーナリズムの生きる道は、これまた講演で紹介されていましたが、
NPOという方向にしか無いようにも見えます。


一方で、
ジャーナリズム無きマスメディアは、その影響力ゆえ大変危険で
またそのようなマスメディアしか持たない国もまた、危険です。

”明るい北朝鮮”シンガポールには、テレビ局は一つしかありません。
チャンネルは沢山あります。他民族・複数公用語国家なので。
でも元締めはみんな一緒、政府。新聞も大きいのはひとつです。

シンガポールだって、表向きは民主主義国家です。
実際は、この国の全ては統治者の能力と良心に依存しています。
この虚実一体を成立させているのが、
ジャーナリズム無きマスメディアでしょう。

今は権力者が能力も良心も兼ね備えている(少なくともそうに見える)
ので、シンガポールは非常にうまくいっていますが、
もし歯車が逆に回り、危険な方向に進む時は一気に行くでしょう。
ジャーナリズムを持つマスメディアが果たす自浄作用が
期待できないからです。


ではどうすればよいのか。
個人的には、やはりマスメディアに
今後ともジャーナリズムを支えてほしいと思います。

持論ですが、広告業は、構造的に一番儲かる業態です。
人々や企業の”期待”というあいまいなものに課金する上、
広告主から費用対効果が非常に比べにくいからです。

ネット広告は費用対効果に若干の透明性をもたらしますが、
まあ、「ボロ儲け」が「大儲け」になるぐらいのものでしょう。
それに”広告媒体を作ること”と”広告主になること”の敷居を
格段に下げていますから 業界の拡大に寄与しているはずです。

ネットをうまく取り込んだ広告業を展開できたマスメディアは、
絶対に儲かる業態に返り咲けるはずです。

マスメディアの方々には、
一番儲けやすい業界で商売をしている対価として、
是非ジャーナリズムに今後も飯を喰い続けさせてやってほしいです。
儲けの最大化が企業活動の要諦であるとしても、
CSRもまた昨今の世の要請ですので。


長くなったので、投稿を分けます。

がんばれ小市民!!2009年06月21日 22:26

なんか最近、旅行記ブログ化の傾向がありますが。。


旅ブログと言えば、

自分なんぞ比べ物にならん程アグレッシブな「世界一蹴の旅」

参照:
『大資本 v.s. 小市民 on Social Media』
http://simplogiq.asablo.jp/blog/2009/01/13/4055165

『世界一蹴の旅』
http://www.libero2010.net/


日本代表のワールドカップ出場決定と前後して、

旅をスタートさせております。


これが結構おもろい。


基本は電波少年ノリのオバカ旅行を繰り広げてるのですが、

(ホント死なないことをお祈りします。)

オーストラリア代表ケーヒルの突撃インタビューとか、

真面目にユニークで価値あるコンテンツも作り出せてます。


ウズベク代表の日本代表対策不足のスッパ抜きとか、圧巻。

(理由:Blu-ray Discが再生できず。。)



徐々に既存メディアへの露出も増えてきており、Yahoo!ニュースにも↓

【YouTube】サッカーW杯までに出場32カ国巡る旅、配信中
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090620-00000022-scn-spo



これ、結構大化けするかも。



そういえば一方の大資本・カンペーちゃん。
http://www.earth-marathon.com/

がんばっているようですが、

日本では話題になってるのかしらん??

見出しと論旨が違いすぎる件について2009年04月17日 00:13

なんか変だなぁと思いつつ読み進むと

「これらのことを勘案すると、FRBがバブルを未然に防げなかったのは、

実務上、無理もなかった一面があるのかもしれません。」

という一文でずっこける記事であります↓

『バブルを招いた“真犯人”はFRB』
-なぜ米国住宅バブルは未然に防げなかったのか?
(日経ビジネスONLINE / 鈴木晋)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20090410/191609/?P=2


ぢゃあ“真犯人”って言いきるなよ。


浅い知識で書くのもなんだが、手もとの教科書の受け売りでいえば、

テーラー・ルールは、(少なくとも実務上は)金利上げ下げの

方向性の手がかりとしては有効でも、

金利の適正水準を示すには、不十分とされているし、

第一米国は、(少なくとも公には)目標インフレ率は

設定していなかったはずでは?


しかも住宅価格は重要とはいえ物価の一要素でしかないのだから、

これのみをターゲットにして金融政策をとれるわけがない。


またまた教科書を受け売れば、

局所的な価格上昇(例えば不動産とかガソリンとか)は、

他の価格下落で相殺されるので、
(ガソリン高い=>モノ売れない=>スーパー特売増える、みたいな)

全体的なインフレに対しては中立のはず。

もっともこれは今回の不動産価格上昇によるの資産効果に際しては

説得力を持たないけれど。


今回の危機の基本的な反省としては、

FRBの政策金利はもちろん遠因の一つではあるものの

どちらかといえば、野放図なローンと

素人一般庶民がハイレバレッジに浮かれちゃうことに

法制度的から歯止めをかけるべきだったのであって、


金利をもう少し上げればよかったのに、というのは

住宅の問題だけ見れば、そう言えるかもしれないけれど、

経済全体で考えると、本当???というところだと思う。



もちろんこんな程度のことは

元内閣府国際経済担当企画官であらせられる著者様は

百も承知に違いない。


だから中盤からは、「FRBもつらいよね」的な話になり、

後半にいたっては、「バブル抑止ってそもそも誰の仕事??」と

いつの間にか論点提起に変わっている。


誰が“真犯人”やねん。


この記事は次回に続くようなので、

そこでやっぱりFRBは真犯人になるのかもしれない。


ただ、予告的に並んでいる“金融監督のツール”としての

“自己資本比率規制”や“時価会計”という言葉から察するに、

これらを政府が行使できないからといって、やっぱFRBのせいだ!

というのはちと厳しいと思う。

上にも書いたようにバブルには群集心理みたいな社会学的な

要素が多分に絡むわけで、金融政策だけで対処しようとすることに

そもそもの無理があるのだから。


もちろんもちろん。

こんな程度のことは

元内閣府国際経済担当企画官であらせられる著者様は

百も千もご承知に違いない。


とすると、下衆の勘繰りによれば、

改めて見直してもやっぱりヒドイこの記事の見出しの付け方は、

編集者の仕業かしらん?

いつも思うけど、ジャーナリズムの質の低さは

日本の停滞の責任の一端を担っている。間違いない。


それとも官僚殿は、庶民はどうせ理解できないだろう、

とタカをくくられておるのかしらん?

大衆夕刊紙が喜んで報じるマインドセットで。。



いづれにせよ、なんとも微妙な記事でありました。